サイバー事件簿 File 04
預けたサーバー経由で、管理画面に侵入された
Webサイトとメールを、レンタルサーバーにまとめて預けている会社は少なくありません。ある日、サーバー会社から「普段と異なる場所からのログインがありました」という通知が届きます。確認すると、サイトには見覚えのないページが大量に作られていました。サーバーのアカウント1つから被害が広がった流れを、モデルケースでたどります。
本記事は、よく見られる被害の流れをもとに構成したモデルケースです。特定の企業・事件を指すものではありません。
何が起きたのか
- 数年前:サーバーを契約総務の担当者がレンタルサーバーを契約。ログインIDとパスワードは、覚えやすいように普段使っている別のネットサービスと同じものにしました。制作会社や前任者とも共有し、社内の共有フォルダにメモとして保存していました。
- 半年前:別のサービスから情報が流出担当者が個人で使っていた別のWebサービスで、利用者のIDとパスワードが流出していました。本人は気づいていません。
- ある夜:サーバーの管理画面にログインされる攻撃者は、流出したIDとパスワードの組み合わせを、さまざまなサービスで機械的に試します。レンタルサーバーの契約管理画面でもそのまま通ってしまいました。2要素認証は設定されていませんでした。
- その後:サイトの管理画面まで乗っ取られるサーバーの管理画面からは、ファイルやデータベース、メールアカウントを操作できます。攻撃者はWebサイトの管理者アカウントを新たに追加し、宣伝目的の偽ページを大量に設置。さらに会社のメールアカウントから迷惑メールが送られ、取引先からも問い合わせが相次ぎました。
入口になった“ほころび”
攻撃者は、サーバー会社の仕組みを破ったわけではありません。「正しいIDとパスワード」で、正面から入ってきたのです。そうなった背景には、いくつかの積み重ねがありました。
- パスワードの使い回し:どこか1つのサービスから漏れると、同じ組み合わせを使っている別のサービスにも入られてしまいます。流出した組み合わせを片っ端から試す手口は、「パスワードリスト攻撃」と呼ばれています。
- 2要素認証を使っていなかった:パスワードに加えて、スマートフォンのアプリなどで確認する仕組みがあれば、パスワードが漏れていても多くの場合はログインを防げました。
- アカウントの共有:担当者、前任者、制作会社が同じIDを使い、メモが共有フォルダに置かれていました。誰が知っているのか、もう誰にも分からない状態でした。
- 管理画面が誰でも開ける場所にあった:サーバーやWebサイトの管理画面のURLは、初期設定のままだと推測しやすいものがあります。世界中のどこからでもログイン画面を開けたことで、試行を受け続けていました。
預け先が破られても、被害を広げないために
この事例で被害が大きくなったのは、1つの鍵で、サーバー・Webサイト・メールのすべてが開く構造になっていたからです。パスワードは、使う側の流出だけでなく、まれにサービス提供側の不備によって漏れることもあります。どこか1か所が破られても、ほかに広がらないようにしておくことが大切です。
- 鍵を分ける:サーバーの契約管理、Webサイトの管理画面、ドメインの管理、メールは、それぞれ別のパスワードにします。
- 人ごとにアカウントを分ける:制作会社に作業してもらうときは、専用のアカウントを発行し、作業が終わったら削除します。誰がいつ何をしたかも追いやすくなります。
- 異変に早く気づく:多くのサーバー会社やCMSでは、ログイン通知やログイン履歴を確認できます。今回の会社も、通知を受け取る設定にしていたことで、発覚までの時間を縮められました。
今日からできる確認
- パスワードの使い回しをやめる:サーバー、Webサイト、ドメイン、メールの管理画面のパスワードが、ほかのサービスと同じになっていないか確認し、同じなら変更します。パスワード管理ツールを使うと、長く複雑なパスワードでも無理なく運用できます。
- 2要素認証を有効にする:サーバー会社やドメイン管理会社の管理画面に、2要素認証の設定があるか確認し、あれば有効にします。
- アカウントを棚卸しする:ログイン情報を知っている人を書き出し、退職者や、今は付き合いのない制作会社が含まれていたら、パスワード変更やアカウント削除を行います。
- 管理画面へのアクセスを絞る:接続元を限定する設定や、海外からのログインを制限する機能がないか、サーバー会社や制作会社に相談します。
- ログイン履歴を見る:管理画面のログイン履歴に、心当たりのない日時や場所がないかを確認します。
パスワードの変更や2要素認証の設定は、ほとんどの場合、費用をかけずに今日から行えます。一方で、いったん乗っ取られると、偽ページの削除や迷惑メールの後始末、取引先への説明に多くの時間を取られます。Webサイトの管理画面が外から誰でも開ける状態になっていないかは、まもりスキャンの簡易診断でも確認できます。