サイバー事件簿 File 05
認証なしで乗っ取られる、Webサーバーの深刻な欠陥
ある朝、「広く使われているWebサーバーのソフトに、ログインしなくても外から操作できる深刻な欠陥が見つかった」というニュースが流れます。社長から「うちのサイトは大丈夫?」と聞かれても、社内の誰も答えられません。緊急の脆弱性が公表されたときに起こりがちな流れを、モデルケースでたどります。
本記事は、よく見られる被害の流れをもとに構成したモデルケースです。特定の企業・事件を指すものではありません。
何が起きたのか
- 公表当日:深刻な脆弱性が発表されるWebサイトを動かすためのサーバーソフトの開発元が、修正版とあわせて脆弱性を公表しました。専門機関も「認証なしで、外部から任意の操作をされるおそれがある」として、早急な更新を呼びかけました。
- 翌日:「うちは関係あるの?」社内の担当者は、自社サイトがどのソフトの、どのバージョンで動いているのかを知りませんでした。レンタルサーバーなのか、制作会社が用意したクラウドのサーバーなのかも曖昧です。制作会社に問い合わせたものの、当時の担当者が退職しており、回答まで数日かかりました。
- 数日後:探る通信が届き始める深刻な脆弱性が公表されると、それを抱えたサーバーを探す自動的な通信が一斉に増えることがあります。このサイトにも、見慣れない形式のアクセスが記録され始めていました。
- 1週間後:対象だったと判明サイトは制作会社が個別に構築したサーバーで動いており、対象のバージョンを使っていました。すぐに修正版へ更新しましたが、調査で見覚えのないファイルが見つかったため、サーバーを作り直すことに。その間、サイトは一時公開停止となりました。
入口になった“ほころび”
この事例で問題だったのは、脆弱性そのものよりも、「自社のサイトが何で動いているかを、誰も把握していなかった」ことです。把握できていれば、公表当日に「対象かどうか」を判断し、更新を依頼できていました。
- 構成の記録がなかった:サーバーの種類、使っているソフトの名前とバージョン、管理している会社。この3つが、どこにも書き残されていませんでした。
- 更新の責任があいまいだった:一般に、複数の利用者で1台を共有する「共用サーバー」では、サーバーソフトの更新はサーバー会社が行うことが多い一方、「VPS」や「クラウド」で自社専用に用意したサーバーは、利用者側(または委託した制作会社)が更新する契約になっていることが多くあります。どちらの形なのかを、社内で誰も知りませんでした。
- 情報を受け取る窓口がなかった:注意喚起は公表当日から出ていましたが、社内でそれを見る人も、制作会社から連絡を受ける取り決めもありませんでした。
「認証なし」の欠陥は、なぜ深刻なのか
多くの不正アクセスは、パスワードを盗んだり推測したりすることから始まります。ところが「認証なしで悪用できる」脆弱性は、ログインそのものを飛び越えてしまうため、どれだけ強いパスワードを設定していても防げません。
さらに、修正版が公表されると、攻撃者もその情報を手に入れます。どこを直したのかを手がかりに攻撃方法が研究され、対象のサーバーを機械的に探し回る動きが始まることもあります。つまり、公表された直後こそ、更新までのスピードが問われる時期です。会社の規模や知名度は関係なく、「古いバージョンが動いているかどうか」だけで狙われます。
こうした注意喚起は、国内ではJPCERT/CC(一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター)(新しいタブで開きます)や、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のセキュリティ情報(新しいタブで開きます)で公開されています。製品名や影響の範囲、修正版の有無が日本語でまとめられているので、まずはここを確認する習慣をつけると安心です。
今日からできる確認
- サーバーの種類を確認する:契約書や請求書、サーバー会社の管理画面を見て、「共用サーバー」「VPS」「クラウド」「専用サーバー」のどれかを確かめます。共用サーバーなら、サーバー会社のお知らせページで緊急時の対応方針を確認しておきましょう。
- ソフトの名前とバージョンを書き出す:Webサーバーのソフト、OS、CMS(WordPressなど)の名前とバージョンを一覧にします。分からなければ、制作会社に「使っているソフトとバージョン」「更新は誰が、どの頻度で行っているか」「緊急の脆弱性が出たとき、誰が判断して連絡をくれるか」の3点を質問してください。
- 注意喚起の情報源をブックマークする:JPCERT/CCとIPAのページを登録し、月に一度でも目を通します。メールで受け取れるサービスもあります。
- 緊急時の連絡ルートを決める:「公表を知ったら、誰が、誰に、何を確認するか」を一行でもいいので書き残しておきます。
外から見て、サーバーのソフト名やバージョンが表示されていないかは、まもりスキャンの簡易診断でも確認できます。ただし、表示を隠していても古いバージョンのままなら危険は残るため、最終的には管理している会社への確認が欠かせません。